バレエ愛好家医師のブログ

若手医者の日記です。バレエと音楽、舞台が好き。

パリ・オペラ座バレエ日本ツアー 白鳥の湖2024年2月9日 パクセウン×ポールマルク 感想

パクさんの踊りは生では見たこと無かったけど、映像で見て素晴らしくて、誰よりも生で見ることを楽しみにしてたダンサー。(このために有給取得)
序曲で登場した時からアームスの美しさに釘付け。白鳥はまさに当たり役で、2幕の物憂い表情と、全ては王子の想像の中の出来事である感じの変に生々しくない幻想上の美しい鳥のような所作が印象的だった。細かいパドブレ、揺らぐことのない軸、エポールマンの繊細さ、全てが完璧だった…
オディールでは強さをはっきり打ち出して演じてたけど、ロシアスタイルのように見栄を切ったりはせず、あくまでエレガント。これぞパリオペスタイル。でもグランのコーダは連続ダブルという…ギャップにやられました🤣
あと黒鳥アダジオのアラベスクキープの時は手を離すタイミングが早すぎて驚愕した。あれでふらつきもしないなんて体幹どうなってるの!
 
ポールマルクも、なんとまあ美しいこと!立ってるだけで美しい足を初めとして、音楽性、表現力、サポート、すべてが想像以上だった。アンニュイな表情、優しげなサポート、オデットを抱きしめようとして拒否される時の切なそうな顔!全鑑賞者が好きにならないでいられないでしょう笑
3幕のグランのコーダではただのグランジュテが高すぎて拍手が出るという👏実は羽生えてるよね?私にはわかる…笑 それこそファイブフォーティとかぐるぐる回るフェッテとかしなくても、ただのジュテやシンプルなピルエット、それどころかアラベスクやシュスで立つだけで匂い立つような、そんなエレガンスを感じさせてくれた。
 
普段はロイヤルを見ることが多い私だけれど、久しぶりにじっくりパリオペを見て、よりパリオペの唯一無二な点に色々気づけたかな。
マイムや顔芸(言い方失礼)は控えめに、全ては踊りで語るスタイル。手先、足先の繊細さ、コールドの揃え方、隅々まで伝統を感じさせてくれた。
技術的には出来るのかもしれないけど、いっぱい回ったり飛んだりというのは良しとされず、まずは音楽性!型!って感じ。文楽とかに近いかも。
その中でも個性や自分なりの解釈を表現できるんだからバレエダンサーってとんでもない能力を持ってるわ…
 
ロットバルトのジャックは初めて知った若手ダンサーなのだけれど、とても良かった。存在感を出すべきところで出せて、要らないところでオーラが消せるというか。マントさばきも見事!今後の出世に期待。
 
コール・ド・バレエを見てここまで感動したのも初めてだった。パリオペのコールドは凄いって言われてる理由が分かったわ… ただ揃えるだけじゃなくて、アームスの使い方も音の取り方も息遣いも全員に共有されてて、完璧に指導されてるのね。カーテンコールまでも白鳥として立ち続けていて、プロ魂すごい。
日本の新国立とかも揃ってはいるけど、機械的にそろっててなんか怖いなって思う時もあるのは、無理にカウントだけで揃えようとしてるからなのかな~
 
白鳥もいろんなバージョンがあるけど、白鳥<悲劇の姫って感じの演技も多い中で、パリオペはオデットとコールドは人間ではなく白鳥であることをすごく感じた。肩甲骨から手にかけての動きと、足先までそろった使い方はもう本当に圧巻。バレエの美しさはこれでしょう!って自信持ってるだろうなと、そりゃパリオペは世界最高峰の伝統と様式美を持つってプライド高くなるのわかるよなと。
 
ヌレエフの白鳥全幕を初めて見たのがパリオペで良かった。本当に幸せ。
セットや衣装はシンプルで、ほぼ王子と白鳥のダンスだけでストーリーを進めていく感じ。王子の家庭教師がロットバルトという設定で、結婚を拒否する王子を狩りに行かせ、彼がすべての糸を引いているのが分かる。そして何なら王子はロットバルトに惹かれてるのでは?というシーンもある。
振り付けは鬼のように細かくて(ロミジュリほどではないけど)、そこで音取るの?みたいなコールドの振り付けもあったり、男性群舞が盛り込まれてたりとなかなか癖強め。冒頭とラストの演出は昔の舞台演出みを感じるけど、でも楽しかったし、伝統を残していくことの大切さみたいなものも感じられた。
 
バレエってやっぱり奥深いなぁ。大好き。今回は白鳥はこの1回でおしまい。来週はマノン!