バレエクラスタ系医師の日記

バレエクラスタ系医師の観劇日記

エコー室の彼女

※患者情報は改変しています。

研修医時代に出会った20代女性。
私はエコー検査の練習中で、とある検査室で技師さんにつきながら検査を見学していた。

彼女はエコー検査に呼ばれてやってきた。
綺麗で、礼儀正しく、こちらの指示にも「はい」ときちんと返事をしてくれた。検査後は「ありがとうございました」と深くお礼をして帰っていった。

カルテを見ると彼女は産科入院中。
水商売で生活していたが妊娠してしまい、ホテルの一室で出産したが、出血が止まらず救急車を呼んだという。
病院にはお金がないので怖くていけなかったとのこと。

独りで子供を産む怖さよりも、お金がなくて病院にいく怖さが勝っていたなんて。

育ちのいい男の先輩医師が言った。「あんなの受け入れられないわ」と。

あんなのってなんだろう。
私はたまたまそれなりの家(母子家庭だしさほど裕福ではないが)に産まれ、公立の高校大学に進めたからこうしているが、どこかで一歩間違えば彼女になり得た。

相手の男が誰か分かっているのかも不明だが、そいつはこのことを知っているのだろうか。
なぜ彼女だけがこんな目にあうのだろう。

あの礼儀正しく、硬いベッドにじっと寝そべりながら、小さな声で返事をする彼女のことは、たまに思い出す。